税理士・社労士事務所でClaudeCodeを使うなら、どこから

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「AIには関心があるのですが、うちは守秘義務があるので」。士業の先生から、よく伺う言葉です。

慎重になるのは当然だと思います。ただ、始められないわけではありません。多くの場合、順番の問題です。 いちばん難しいところから手をつけようとして、そこで止まっています。

ここでは、税理士事務所・社労士事務所がClaudeCodeを使うとしたら、どこから始めるのがよいかを整理します。なお、**法令や会の規律の解釈については触れません。**判断は、所属される会や専門家にご確認ください。

事務所の業務は、2つに分かれます

まず、事務所の中の仕事を2つに分けて見てください。

専門判断そのもの 税務判断、申告内容の決定、手続きの代理、顧問先への助言
その周辺の作業 資料の整理、文書の下書き、記載漏れの確認、手順書の整備、問い合わせ回答のたたき台

AIの話になると、たいてい上のほうから議論が始まります。「AIが申告書を作れるのか」「税務判断を任せられるのか」。そして、任せられないという結論になって終わります。

ただ、先生方の時間を実際に奪っているのは、下のほうではないでしょうか。

最初に任せるのは、周辺のほうです

理由は3つあります。

1つ目は、失敗しても取り返しがつくことです。 下書きの段階であれば、間違っていても先生が直せます。顧問先に出る前に止まります。

2つ目は、繰り返しがあることです。 月次のやりとり、年に一度の同じ案内、決まった様式の書類。繰り返しのある業務ほど、覚えさせる価値が出ます。

3つ目は、顧問先の情報を伴わない作業を選べることです。 ここが、士業では特に大きい点です。

たとえば、次のような作業は顧問先を特定しなくても成立します。

  • 事務所内の手順書を整える
  • 過去に何度も答えた質問の、回答文のひな形を作る
  • 制度改正の内容を、職員向けに分かりやすく整理する
  • 顧問先向け案内文の、言い回しを統一する

業務の選び方そのものは社員にAIを配っても、使われない理由に書いた3つの条件と同じです。士業事務所の場合、そこに「顧問先の情報を伴わないもの」という条件が1つ加わる、と考えてください。

顧問先の情報をどう扱うか

とはいえ、周辺の作業でも顧問先の情報に触れる場面は出てきます。

考え方はAIに入れてよい情報を、どう決めるかに書いたとおりですが、士業の場合、1点だけ性質が違います。

守秘義務が、契約ではなく法律で定められていることです。 一般の会社であれば、取引先との契約を確認すれば判断できる部分があります。士業の場合は、その手前に法律上の義務があります。

そのぶん、線引きは慎重になります。ただ、慎重であることと、使えないことは違います。

前回の記事で「入れない」ではなく「入れられる形にする」と書きました。士業事務所では、この考え方が特に効きます。

  • 顧問先名を「A社」に置き換える
  • 金額や人数を、実際とは違う仮の数字にする
  • 業種だけ残して、固有の情報を落とす

文章の体裁を整える、抜けを探す、表記を統一する。こうした作業に、顧問先の実名は要りません。

所属する会の指針を確認する

士業には、法律のほかに会の規律があります。

生成AIの利用について、会が指針を出している場合があります。まず、ご自身が所属される会の会員向け情報をご確認ください。指針の有無や内容は会によって異なりますので、ここで一般化して書くことは避けます。

なお、事務所によっては独自の利用ガイドラインを作り、公開しているところもあります。自社で決める際の参考になる場合があります。

事務所ほど、属人化が効いてきます

士業事務所には、構造的な特徴があります。判断が所長に集中しやすいことです。

職員が増えても、最終的な判断は所長がする。だから所長の時間がいつまでも空かない。よく伺う話です。

ここは、判断基準を書き出す価値がいちばん高い場面でもあります。「この場合はこう処理する」「これは必ず所長に上げる」。頭の中にある線引きを文章にすれば、職員が迷う回数が減ります。

この考え方は構築仕様書は、秘伝のたれですに書いたとおりです。事務所の場合、たれにあたるのは、所長の判断基準そのものです。

任せないほうがよいもの

逆に、いまの段階では任せないほうがよいものも書いておきます。

最終的な専門判断。 当然ですが、責任を負うのは先生です。AIの出力を根拠にはできません。

法令番号や判例番号を含む記述。 生成AIは、こうした固有の番号を誤ることがあります。参照するのであれば、必ず原典で確認してください。これはどのAIを使っても変わらない性質です。

顧問先へそのまま出す文書。 下書きまでにとどめ、必ず確認を通す運用にしてください。

この3つを外して考えると、任せられる範囲は思っているより広いはずです。

まとめ

  1. 事務所の業務を「専門判断」と「その周辺」に分け、周辺から始める
  2. 顧問先の情報は「入れない」ではなく「入れられる形にする」
  3. 所長に集中している判断基準を書き出すと、事務所全体が動きやすくなる

守秘義務があるから使えない、ではありません。守秘義務があるからこそ、線引きを先に決める。順番はそれだけです。

Black Bullの導入支援では、どの業務から任せるか、どこまでの情報を扱ってよいかを含めて「ClaudeCode構築仕様書」という形にまとめ、事務所に残しています。**なお、法令や会の規律の解釈については、所属される会や専門家へのご確認をお願いしています。**線引きの設計はお手伝いできますが、そこは専門家の領域です。