顧問先から「AIはどうですか」と聞かれたら

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  • 情報管理

「うちもAI、入れたほうがいいんでしょうか」。顧問先から、こうした相談を受ける機会が増えているのではないでしょうか。

答えにくい質問だと思います。ツールに詳しいわけではありませんし、勧めて何かあっても困ります。かといって「よく分かりません」とも言いにくい。

この記事は、その場面で使っていただくために書いています。なお、**労務や就業規則について、こちらから解説することはしません。**そこは先生方の領域です。お伝えするのは、AI側でいま何が起きているかだけです。それが労務のどこに接続するかは、先生方のほうが正確に判断されるはずです。

聞かれているのは、ツールを選ぶ話ではありません

まず、この相談は「どの製品がよいか」を聞かれているわけではない場合がほとんどです。

顧問先の社長が本当に知りたいのは、たいてい次のことです。

  • 入れて大丈夫なものなのか
  • 何か決めておかないといけないことがあるのか
  • うちの規模でも意味があるのか

製品の比較は、決めたあとの話です。そして、その手前で決めることのほうが、実は労務に近い場所にあります。

AI側で、いま起きていること

先生方に知っておいていただきたいのは、次の3つです。

1. 会社が導入する前から、個人アカウントで使われています

これがいちばん多い実態です。

会社として何も決めていなくても、社員が自分のスマートフォンやパソコンで、無料のAIを使っています。悪意はありません。仕事を早く終わらせたいだけです。

つまり、**「導入するかどうか」を検討している時点で、すでに使われている可能性があります。**顧問先が「うちはまだ入れていません」とおっしゃっていても、実態は違うかもしれません。

まず確認すべきは、導入の是非よりも実態のほうです。

2. 契約しているプランによって、データの扱いが変わります

これは、あまり知られていません。

同じサービスでも、契約しているプランによって、入力した内容の扱いが変わります。個人向けの無料プランや個人契約のプランでは、入力した内容がAIの学習に使われる設定になっている場合があります。法人向けのプランでは、通常そうした扱いにはなりません。

詳しくはAIに入れてよい情報を、どう決めるかに書きましたが、「AIに入れると学習されて漏れる」という説明は正確ではありません。契約と設定によって変わります。

ここが重要なのは、**1つ目と組み合わさったときです。**社員が個人契約の無料プランで顧客情報を扱っていた場合、会社が把握しないところで、その情報が学習に使われている可能性が出てきます。

3. 「入れない」だけのルールは、守られません

顧問先が最初に作るルールは、たいてい禁止リストです。「顧客名を入れない」「金額を入れない」。

出発点としては正しいのですが、禁止だけを増やしていくと、使える場面がなくなります。そして、使えないルールは守られません。隠れて使われるようになるだけです。

現実的なのは、置き換えて使う形を用意することです。顧問先名を「A社」に、金額を仮の数字に。それで足りる作業は、思っているより多くあります。

それが労務のどこに接続するか

ここから先は、先生方の領域です。断定は避けて、論点だけ挙げます。

  • 服務規律や情報管理の定めに、AIの利用が読み込める状態になっているか
  • 規定がない状態で問題が起きたとき、どう対応することになるか
  • 個人アカウントでの業務利用を、どう位置づけるか
  • 業務の進め方が変わることが、労働条件にどう影響するか

どれも、AI以前から先生方が扱ってこられた論点の延長線上にあるように思います。新しい法律の話ではなく、既存の定めが新しい道具に届いているかどうかの話です。

そう捉えると、顧問先への助言としては、むしろ先生方の慣れた形に落とせるのではないでしょうか。

顧問先に渡せる確認リスト

相談を受けたときに、そのままお使いいただける形にしておきます。ツールを選ぶ前に、会社側が答えるべきことです。

確認すること なぜ必要か
いま社内で誰が何を使っているか 導入前から使われている可能性がある
使っているのは会社契約か、個人契約か プランによってデータの扱いが変わる
入れてよい情報の範囲は決まっているか 決まっていないと、慎重な社員ほど使わない
迷ったときの相談先は決まっているか 「迷ったら止める」だけでは進まない
例外を認める手続きはあるか ないと、隠れて使われる

この5つに答えられない状態でツールを選んでも、たいてい定着しません。理由は社員にAIを配っても、使われない理由に書いたとおりです。

先生方の事務所自身については

顧問先ではなく、事務所の中でどう使うかについては、別に書いています。守秘義務がある中で、どこから始めるかという話です。税理士・社労士事務所でClaudeCodeを使うなら、どこからをご覧ください。

公的な資料を示すという答え方もあります

「何を基準に考えればいいのか」と聞かれた場合、公的な資料を示すという答え方もあります。

総務省と経済産業省が「AI事業者ガイドライン」を公表しています。最新は第1.2版(令和8年3月31日)です。企業がAIを扱う際の考え方がまとめられています。

**内容の解釈はここでは書きません。**原典をご確認ください。ただ、「国もこうした資料を出しています」と示せること自体が、顧問先を落ち着かせる場合があります。

まとめ

  1. 聞かれているのはツール選定ではなく、その手前で決めておくこと
  2. AI側の事情は3つ。個人アカウントでの先行利用、プランによるデータの扱いの違い、禁止だけのルールは守られないこと
  3. 接続する先は既存の定め。新しい法律の話ではない

顧問先の業務に合わせて、何をどこまで任せるか、どの情報を扱ってよいかを決める作業は、外から質問される形のほうが早く進みます。

Black Bullの導入支援では、この整理を「ClaudeCode構築仕様書」という形にまとめ、会社に残しています。顧問先の会社について具体的に相談したい、というご連絡でも構いません。お気軽にお声がけください。