2つのExcelの表を見比べる作業、AIに頼めますか
顧客の一覧と、メールで届く決済の知らせを見比べて、全員が支払っているかを確かめたい。支払っていない人には、自動でメールを送りたい。実際に、こうしたご相談をいただいたことがあります。作業そのものに時間を取られている、というお話でした。
結論から書きます。入金の知らせを一覧のファイルにできれば、2つの表を見比べる作業はClaudeCodeに頼めます。 ただし、見比べる作業では、エラーが出ないまま結果だけがずれることがあります。だから、何を同じ人とみなすかとどう確かめるかを、先に決めておく必要があります。
そして、未払いの人に自動でメールを送るところは、おすすめしません。 理由は、この記事の後半で書きます。
ClaudeCodeで置き換えられる作業と、置き換えられない作業では、作業を仕分けるための3つの問いを挙げました。ファイルになっているか、手順を説明できるか、間違いに気づけるか、の3つです。今回は、その3つの問いを、このご相談に当てはめていきます。
2つの表を見比べる作業は、ClaudeCodeに頼めますか?
頼めます。表を見比べる作業は、ファイルになっているか・手順を説明できるか・間違いに気づけるか、の3つの問いに、Yesと答えやすく見える作業です。 ただし、2つ目と3つ目の問いには落とし穴があります。
顧客の一覧と入金の一覧を見比べる場合で、3つの問いに当てはめると次のようになります。
| 問い | 顧客の一覧と入金の一覧を見比べる場合 |
|---|---|
| 1. ファイルになっていますか | 顧客の一覧はExcelにある。入金の一覧も、銀行や決済サービスの画面からダウンロードできればファイルになる |
| 2. 手順を人に説明できますか | 「顧客1人ずつについて、入金の一覧に同じ人がいるかを見る」と説明できる。ただし「同じ人」の決め方に落とし穴がある |
| 3. 間違いに気づけますか | 人数と合計で確かめられる。ただし、数では見つからない間違いもある |
1つ目の問いで引っかかるのは、入金の知らせがメールでしか届いていない場合です。メールは、作業フォルダの中にあるファイルではありません。決済サービスの管理画面から入金の一覧をダウンロードできるなら、まずその一覧を使うのが近道です。メールから直接読ませる話は、この記事では扱いません。
2つ目と3つ目の「ただし」が、この記事の本題です。
ClaudeCodeは、どうやって表を見比べるのですか?
ClaudeCodeにExcelの作業を頼むと、多くの場合、見比べるためのプログラムを書いて、そのプログラムを実行する形で進みます。 人がExcelを開いて、目で1行ずつ追っていく進め方とは違います。
Anthropicが公開しているExcel作業用の手順書(xlsxスキル)も、Pythonというプログラム言語で処理を書く前提になっています。プログラムの中身を読める必要はありません。頼むときは、何と何を比べて、何を知りたいかを言葉で伝えます。
プログラムで見比べる形には、利点が2つあります。
- 見比べる手間は、顧客が増えてもほとんど増えません。 目で追う作業は、顧客が増えるほど時間がかかります。プログラムなら、見比べる手間は顧客の数によってほとんど変わりません。ただし、結果を人が確かめる作業は残ります。確かめ方は、この記事の後半で書きます
- 来月も同じ手順で動かせます。 プログラムをファイルとして残しておけば、来月は同じプログラムを動かすだけで済みます。頼むたびに見比べ方が変わる、ということを避けられます
見比べた結果は、どういう形で出てきますか?
顧客の一覧と入金の一覧を見比べると、結果は4つに分けられます。 「入金なし」の一覧だけを出させないことが大事です。
| 分け方 | 中身 |
|---|---|
| 入金あり | 顧客の一覧にいて、入金の一覧にもいる |
| 金額が合わない | 入金はあるが、請求した金額と違う(顧客の一覧に請求額が入っている場合) |
| 入金なし | 顧客の一覧にいるが、入金の一覧に見当たらない |
| 誰の入金か分からない | 入金の一覧にあるが、顧客の一覧に見当たらない |
見落としやすいのは、4つ目の「誰の入金か分からない」です。「誰の入金か分からない」入金があるなら、そのどれかは、「入金なし」に入っている人の入金かもしれません。 「入金なし」の一覧だけを見ていると、この可能性に気づけません。
名前が違う入金は、どう扱われますか?
決めておかなければ、ClaudeCodeが何らかの決め方で扱います。どの決め方でも結果の表はきれいに出てくるので、何をもって同じ人とするかは、人が先に決めておく必要があります。
入金の一覧の名前は、顧客の一覧の名前と一致するとは限りません。たとえば、次のような場合があります。
- 顧客の一覧は「山田 太郎」、振込の名義はカタカナで「ヤマダ タロウ」
- ご家族の名前で振り込まれている
- 個人の顧客が、会社名で振り込んでいる
- 同じ名前の顧客が2人いる
- 2か月分がまとめて振り込まれている
ClaudeCodeで置き換えられる作業と、置き換えられない作業では、突き合わせを「照合のルールが明確」な作業として挙げました。ただ、照合のルールが明確に見えるのは、手作業で見比べている担当の方が、名前が違っていても「これは山田さんのご家族だな」と頭の中で判断を済ませているからだと思います。この判断が言葉になっていないと、ClaudeCodeには伝わりません。
判断の基準が伝わっていない場合、ClaudeCodeは、名前が完全に一致したものだけを同じ人とみなすかもしれませんし、似た名前を同じ人とみなすかもしれません。どちらの場合も、エラーは出ません。同じ記事で、問い2(手順を説明できるか)のNoは「動かない」という形では現れない、と書きました。見比べる作業でも、同じことが起きます。
両方の表に顧客番号のような共通の番号が入っていれば、名前ではなく番号で見比べられます。名前で見比べるしかない場合は、どこまでを同じ人とみなすかを、手順として書き出しておきます。
見比べた結果が間違うことはありますか?
あります。しかも、エラーが出ないまま間違うことがあります。
Anthropicが公開しているExcel作業用の手順書(xlsxスキル)には、数式を計算し直したときについての注意書きがあります。計算がエラーなく通っても、数式が正しいとは限らない。数式の範囲が1行ずれているだけで、エラーの無いきれいなファイルが、間違った数字のまま出来上がる、という趣旨です。
注意書きは数式についてのものですが、表を見比べるプログラムでも、見る範囲や条件がずれれば、同じようにエラーの無いまま間違った結果が出る可能性があります。顧客の一覧と入金の一覧でいえば、たとえば次のようなことが考えられます。
- 表のいちばん下にある「合計」の行を、1人の顧客として数えてしまう
- 途中に空いた行があり、そこで表が終わったとみなして、その下の顧客を見ていない
- ダウンロードした入金の一覧の期間が、1日ずれている
3つ目はClaudeCodeの間違いではなく、渡したファイルの間違いです。ただ、結果の表の見た目は、どの場合も正しいときと変わりません。
見比べた結果は、どうやって確かめればいいですか?
結果を1行ずつ見直すのではなく、まず数で確かめます。 そのうえで、数では見つからない間違いを、原本と照らし合わせて確かめます。
数で確かめるときに大事なのは、基準にする数を、ClaudeCodeとは別に人が確かめておくことです。プログラムが自分で読んだ顧客の人数を基準にすると、読んだ全員をどれかに振り分けている以上、足し算は必ず合います。途中の空いた行から下を見ていなかった場合も、数は合ってしまいます。
そのうえで、次の2つを確かめます。
- 人数が合うか。 「入金あり」「金額が合わない」「入金なし」の人数を足すと、元の顧客の一覧で人が確かめた人数と一致するはずです
- 金額の合計が合うか。 顧客に割り当てた入金と「誰の入金か分からない」入金を足した額は、通帳や入金の明細で人が確かめた入金の合計と一致するはずです
一致しなければ、どこかで数え漏れか、二重の数え上げが起きています。
ただし、数で見つかるのは、漏れと重複だけです。 同じ名前の顧客を取り違えた場合のように、入れ替わっているだけの間違いは、人数も合計も合ってしまいます。
そこで、原本との照らし合わせを加えます。「入金なし」と判定された人は、全員を通帳や入金の明細で確かめます。 「入金なし」の一覧は、督促につながる一覧だからです。「入金あり」の人は、何人かを選んで確かめます。顧客全員を手で見比べるよりも、確かめる人数はずっと少なくなるはずです。
未払いの人に、自動でメールを送ってもらえますか?
おすすめしません。督促メールの下書きまでを作らせて、送るのは人が確かめてからにしてください。
理由は、「同じ人」の決め方の問題です。ご家族の名前で振り込んだ人が「入金なし」と判定されていたら、支払いを済ませた人に督促が届きます。
社内の表の間違いは、社内で直せば済みます。相手に届いたメールは、取り消せません。 お客様の側には、支払ったのに督促された、という経験が残ります。
毎朝9時に、集計を終わらせておくことはできますかでも、確認なしで社外に出てしまう作業は避けてください、と書きました。督促メールは、確認なしで社外に出てしまう作業の代表例です。
督促メールの下書きまでなら、任せられます。ただし、下書きも1通ずつ確かめます。 同じ名前の顧客を取り違えていれば、下書きの宛名と金額が、別の人のものになっているかもしれないからです。確かめるのは、その人が本当に入金していないか、宛名と金額がその人のものか、の2点です。
任せる前に、気をつけることはありますか?
元のファイルは上書きさせず、結果は別のファイルに出させてください。 顧客情報を扱うことも、あらかじめ意識しておく必要があります。
元のファイルを残しておく理由は2つあります。
1つ目は、確かめるときに原本が要るからです。結果を元のファイルに書き込んでしまうと、何と照らし合わせればよいか分からなくなります。
2つ目は、Excelのファイルによっては、保存し直し方によって中身の一部が失われる場合があるからです。Anthropicの手順書(xlsxスキル)には、マクロ付きのファイル(.xlsm)は特別な指定をせずに保存し直すとマクロが消えること、ほかのファイルを参照しているブックは参照が失われる場合があることが書かれています。
顧客の一覧には、名前や金額が入っています。AIに入れる情報の線引きはAIに入れてよい情報を、どう決めるかで、ClaudeCodeがパソコンの中のどこまでを見るかはClaudeCodeに、パソコンの中を勝手に見られませんかで書きました。見比べる作業を始める前に、あわせてご確認ください。
よくある質問
Excelの中で使うAI(CopilotやClaude for Excel)とは、何が違いますか?
CopilotやClaude for Excelは、Excelの画面の中で使うAIです。ClaudeCodeは、Excelの外から、フォルダにある複数のファイルをまとめて扱います。1つのブックの中で完結する作業なら、Excelの中で使うAIで足りる場合もあるので、作業に合わせて選んでください。なお、Claude for Excelは2026年9月の時点で、Pro・Max・Team・Enterpriseの各プランで使えます(公式ドキュメント)。
VLOOKUPやマクロで回っている作業も、置き換えたほうがいいですか?
今うまく回っていて、担当者が変わっても続けられるなら、無理に置き換える必要はありません。置き換えを考えるのは、仕組みを作った人しか直せない場合や、名前の違いのような判断が毎回手作業で残っている場合です。
毎月、決まった日に自動で見比べさせることはできますか?
できます。ただし定時に動かすのは、何を同じ人とみなすかと確かめ方が決まり、手で何度か動かして結果が合うと分かってからにしてください。定時に動かす仕組みと条件は、毎朝9時に、集計を終わらせておくことはできますかで書きました。督促メールは、定時に動かす場合も下書きまでにします。
まとめ
- 入金の一覧をファイルにできれば、2つの表を見比べる作業はClaudeCodeに頼める。ClaudeCodeは多くの場合、見比べるためのプログラムを書いて実行する
- エラーが出ないまま間違うことがある。何を同じ人とみなすかを先に決め、人が確かめた人数と合計、原本との照らし合わせで確かめる
- 督促メールは下書きまで。1通ずつ確かめてから、人が送る
見比べる作業は、仕組みとしては単純です。難しいのは、何を同じ人とみなすか、何を食い違いとするか、どう確かめるかを決めるほうです。ここが決まっていないと、きれいな表が、間違ったままできあがり続けます。
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